2016年9月、マイセン磁器製作所のアート部門と人形製作部門統括責任者、リアーネ・ヴェルナー氏が、髙島屋日本橋店で開催された「マイセン展」のために来日しました。会場では「トークイベント」が行われ、マイセンの代表作、スワンやスノーボールなど展示作品についての説明やシノワズリーに関する興味深い話を聞くことができました。マイセンのアート部門の責任者として活躍しているリアーネ・ヴェルナー氏のインタビューをご覧ください。
▲リアーネ・ヴェルナー氏
リアーネ・ヴェルナー氏 プロフィール Liane Werner
1984年~1987年 ベルリンの大学で経済学を学ぶ
1987年 国立マイセン磁器製作所に入り、営業部所属となる
2000年 営業部長に就任
2013年~ アート部門、人形製作部門の統括責任者として逸品と呼ばれる古典的作品、限定作品、アート作品の開発に携わる
1:世界限定作品を毎年発表されていますが、今回の作品について、特徴的なことはどんなことですか?また、その中でも珍しい作品や貴重な作品などがありましたら教えてください。
リアーネ・ヴェルナー氏(以下L.W.):世界限定作品では、いつも300年という長い歴史から、さまざまな時代・様式のものを選んでバランスよく復刻するようにしています。今年も同様です。また、埋もれてしまった技術を再現することで伝統の継承に努めています。その意味では、今年の「パト・シュール・パト」花瓶が貴重だと思います。
▲花瓶「ベールを持って踊るニンフ」 パト・シュール・パト 世界限定25点
原型は1781年、ヨハン・カール・シェーンハイトによって作られました。卵型のフォーム、古典的な蛇の取っ手、四角い台座、寓意的な意匠など、すべてにルイ16世様式の要素が盛り込まれています。磁土を薄く塗り重ね、カメオのような効果を得るには非常に高い技術が必要とされます。踊るニンフ(ギリシア神話の妖精)とベールが極めて精巧に表現された印象的な花瓶です。
2:日本のアーティスト、木村浩一郎氏とキーヤン(木村英輝氏)とコラボレートしましたが、作品の感想をおしえてください。
L.W.:木村浩一郎さんのデザインは、浩一郎さんの特徴である非常にモダンなものというより、今回は優しく、エレガントな作風で、マイセンのフォームに非常によく映えると思いました。特に黒をバックにしたものは漆のようにも見え、繊細な花と相まって、特別な効果を上げています。黒の上に絵付することはできないので、花の部分を白く残し、そこをラッカーで覆って黒をのせ、焼成後に花を描くなど、技術的にも大変でした。
木村英輝さんの作品は、大胆な筆運びで動物の特徴をよく捉え、表情も豊かで英輝さんらしいデザインと思います。これまでマイセンが描いてきた動物たちとは異なり、マイセンで描く人たちにも良い刺激となりました。
▲木村浩一郎氏デザインのHANAシリーズ
プラーク「Fiore(フィオーレ)」
▲木村英輝氏デザイン
飾皿「Goodluck Goldfish」
▲木村浩一郎氏デザインのHANAシリーズ
人形「Fiore(フィオーレ)」
▲木村英輝氏デザインプラーク
「Smiling Elephants」
3:今後もアーティストとコラボレートをしていきますか?(その理由もお聞かせください。) L.W.:はい。外国のアーティストとコラボレートすることは、その国の文化に触れることでもあります。お互いに非常に刺激があり、生き生きとしたまさに「現代の」作品が生まれます。特に日本のアーティストとはコラボレートしたいです。両国の間には特に深い結びつきがあるのですから。
4:日本の印象はいかがですか?
L.W.:今回、初めて日本のお客様の前でお話し、そのリアクションからお客様が本当に磁器を愛しておられることを感じました。磁器を理解する目をもった方々でした。それが実感できて良かったです。
5:日本のファン・ユーザーに何かメッセージをお願いします。
L.W.:頭でではなく、心で磁器を感じ取って楽しんでください!