2019年9月、マイセン磁器製作所のアーティスト、ベアベル・アンドレアス氏が、西武池袋本店で開催されたマイセン展の絵付実演のために来日しました。アンドレアス氏は、ベテランのマイスターであり、独特な感性に人気のあるグードルン・ガウベ氏のデザインにも習熟し、幅広く活躍しています。実演会では多彩な絵付技術を披露しました。
▲ベアベル・アンドレアス氏
プロフィール
ベアベル・アンドレアス氏
Bärbel Andreas
マイセンでの活動が48年となるベテランのマイスター。インド文様*の分野で経験を積み、グードルン・ガウベ氏のデザインにも習熟しています。
(*17世紀にオランダ東インド会社を介して海を渡った東洋の焼物の柄をマイセンでは「インド文様」と称しています。)
詳細はこちらをご参照ください。
<MEISSENメモ(75):絵付「インド文様」のご紹介>
https://www.gk-japan.com/blog/?p=13095
- 一番好きな絵付は何ですか。 ベアベル・アンドレアス氏(A・B):「インド文様」の絵付です。今回私はガウベさんの作品を絵付実演しましたが、長年描いてきたのはインド文様なんです。インド文様は、ペンと筆を用いて描く、とても時間のかかる手の込んだ絵付です。まずペンを使い、黒、朱色、紫色などで輪郭を線描きし、その後線で囲んだ部分に筆で色をのせていきます。特に私が好きなのは、ワトーグリーンと呼ばれる美しい顔料。焼成後に美しく発色します。出来上がりを見るのはとても嬉しいですね。
*絵付風景
*ベアベル・アンドレアス氏が絵付した作品
▲709310/44052
ボウル
高さ:約6.5cm 径:約12.0cm
▲58A022/55654
竹のポット(日本オリジナル)
高さ:約11.5cm
▲52725/590584
蓋付ボックス(世界限定50点)
幅:約14.5cm
- ベアベル・アンドレアスさんは、48年の長きに渡って絵付師として活躍してこられました。これまでで一番印象に残っている作品や出来事は何でしょうか。
-A・B:最も印象に残っているのは、昨年メッセに出品された、大きなクレタヴェース「マイセンの絵付の世界」です。約30人の絵付師が、およそ130に分割された面にこれまでのマイセンの絵付を分担して描きました。ヘロルトの絵付*や花絵付、金彩を用いたもの、アラビアンナイトなどの現代絵付、そしてもちろんインド文様。全体の3分の1がインド文様だったので、私もかなり絵付に参加しました。とても楽しかったですね。
(*ヨハン・グレゴリウス・ヘロルト。1696-1775年。優秀な化学者でもあり多くの顔料を調合し完成させ、マイセンの顔料は今日でもヘロルトの書き残したものをもとに調合されています。また絵付師としても素晴らしい腕を示し、 「シノワズリー」の世界を作り上げ、 港湾画や風景画、花絵付にも偉大な足跡を残しました。)
▲50M45/955380
クレタヴェース「マイセンの絵付の世界」
高さ:約82cm
*アンドレアスご夫妻の絵付風景
*(絵付箇所のアップ)
- このお写真に写っている大きな花瓶ですね。向かい側で描いている男性は、もしやご主人のアンドレアス*さん? 銅版画を模した緻密な花絵付などで有名な、あのミヒャエル・アンドレアスさんですか?
-A・B:ふふふ、そうですよ。そういえば、2017年に夫と一緒に台湾で絵付の実演をしたことも思い出深い出来事です。彼が花絵付をし、私がインド文様の部分を描いて一つの作品を仕上げました。
- ご家庭のことを伺ってもいいですか。
-A・B:もちろん!夫とはマイセンの養成学校で知り合って、お互いに絵付のことを話したり相談したりするうちに親しくなり、結婚してもう43年になります。私たちには息子と娘がいて、それぞれに子どもが生まれ、今は孫が3人いるんですよ。
- 将来の夢は何でしょうか?
-A・B:今年の12月に、夫と私は引退します。仕事をやめたら、孫の面倒をみたり、旅行をしたりして、ゆったりと暮らしたいですね。二人でずっと健康で、残りの人生を楽しみたいと思っています。
- 日本の印象は?
-A・B:どこも清潔でとても気配りが行き届き、日本の方たちは思いやりがあると感じました。私の絵付実演も熱心に見てくれましたし…。私の絵付師としての人生の、最後の実演が日本だったのはラッキーでしたね。それから、日本はとても暖かくて、というか暑くて(笑)、休みの日に鎌倉に行きましたが、七里ガ浜の海岸がとても気持ちよかったです。そうそう、お寿司も今まで食べた中で一番美味しかったわ。とにかくお食事がとても美味しかったです。
- -最後に日本のマイセンファンに一言、お願いします。
-A・B:マイセン磁器を愛してくださる日本の皆さん!どうぞマイセン磁器を使ってください。たとえそれが特別なものであっても、戸棚にしまい込んだりしないで、もしもそれがコーヒーカップなら、毎日そのカップでコーヒーを飲んでください。お皿なら、お菓子をのせて召しあがってください。そうして、あなたのコーヒータイムをさらに豊かな時間にしてくださいね!